インタビュー〈波多野睦美&PRISM consort of viols〉によせて

PRISM consort of viols(プリズムコンソートオブヴァイオルズ)のリーダー櫻井茂さんにお聞きしました

PRISM consort of violsの櫻井茂さんにお聞きしました。櫻井茂さんは上野学園の准教授でヴィオラ・ダ・ガンバの若手奏者の育成やコンサート活動で日々忙しく飛び回っておられます。2月13日の開催される大阪島之内教会でのコンサート前にインタビューいたしました。(敬称略)

《中の人》今回の大阪公演ではジョン・ダウランド(1563-1626)やウィリアム・バード(1543-1623)の作品を取り上げられます。シェイクスピア(1564-1616)と同時代に活躍した作曲家たちですね。シェイクスピア時代のイギリス音楽の魅力についておしえてください!

《櫻井》「シェイクスピア時代のイギリス音楽の魅力」という、大変興味深い、しかも極めて難しいテーマですが、もう少し一般的に言いかえると「エリザベス朝の英国音楽」と考えた方が良いかもしれません。この時代を特徴付けるのは何といっても宗教改革であり、音楽は直接的にその影響をうけました。

《中の人》イギリスの宗教改革といえば、ヘンリー8世が王妃と離婚しようとしてローマカトリック教会と決裂し、イギリス国教会が生まれたというようなことがありましたね。

《櫻井》そうです。その結果、英語による教会音楽が作られるようになりました。

《中の人》それまではラテン語で歌われていた教会音楽が、王の離婚問題をきっかけに英語で歌われるようになったと。

《櫻井》そう言ってしまうと少し単純化し過ぎかもしれませんが、大きなきっかけであったとは言えるでしょう。といってもその後英語だけになったというわけではなく、ラテン語の教会音楽も残っています。その後エリザベス1世の治世とともに言わば〈イギリス文化の黄金期〉が訪れると、マドリガルのような世俗的な声楽曲や、鍵盤楽器やガンバコンソートのための世俗的器楽曲も、さらにはシェイクスピアに代表される演劇文化に根差した劇音楽も発展しました。

《中の人》つまりエリザベス1世の統治した時代に英国特有の豊かな音楽文化が花開いたのですね。

《櫻井》まさにそのとおりです。個人的にはイギリスの音楽の魅力とは、素朴さ、単純さといった基本的な性格が、優美な憂愁(メランコリー)によって淡く色付けされているところにあるように思います。そしてそれはルネッサンス以前から近代までを貫く一貫した性格であるように感じられます。
エリザベス朝の音楽には、こうしたイギリス音楽の特徴が分かりやすく、親しみやすく、味わい深い形で現れていると言えるのではないでしょうか。

《中の人》なるほど。そうすると今度のコンサートではイギリス音楽の魅力が詰まったエリザベス朝の音楽を当時の楽器であるヴィオラ・ダ・ガンバとダウランドのスペシャリスト波多野さんの歌で聴けるということですね。これは本当に楽しみになってきました。関西のみなさま必聴です!櫻井さん、ありがとうございました。

波多野睦美&PRISM consort of viols~J.ダウランドの世界

日時:2022年2月13日(日) 15:00開演 14:30開場

料金:一般前売り 4000円 高校生以下 2500円 

会場:日本キリスト教団 島之内教会

  • 地下鉄 御堂筋線「心斎橋」駅
    心斎橋筋出口(大丸側)徒歩約7分
  • 地下鉄堺筋線「長堀橋」駅
    7番出口 徒歩約3分

出演:波多野睦美(メゾソプラノ)/ PRISM consort of viols (櫻井 茂 ,折口未桜 ,羽川恵子, 清水愛架)